はじめに
前の投稿では、ドナルド・トランプの「心性」(行動や考え)が、ヤクザのそれと極めて類似していることについて述べました。
今回は、そもそも、「ヤクザの心性」なるものは、どのようなものかについて明らかにし、そこからトランプの「性格」を読み解いていきたいと思います。
そして、米国大統領としてのドナルド・トランプによって、どのような世界が生み出されるのか、可能な範囲で推察してみたいと思います。
ヤクザの「心性」とは
ここで、彼の著書で向谷氏が描いている「ヤクザ」の典型的な行動様式について、箇条書きにしてみます。
- 言葉や態度で「威圧」し、「恐怖心」を植え付け、相手をコントロールする
- 自らの「利益」のみを求め、相手の利益や感情をまったく気にかけない
- 「倫理感」や「順法精神」に欠ける
- 平気で相手をだます、「嘘」をつく
- 相手が頼ってくるよう、力や金があることを見せつける
このような行動様式からは、「攻撃性」、「自己中心性」、「共感性の乏しさ」、「社会の規律に対する順守精神の欠如」、「人を操作しようとする志向性」といった、彼らの独特な「心性」が見えてきます。
これらの心性は、一般的には、「反社会的」と呼ばれる心性であり、精神医学的には、「社会病質性(ソシオパシー)」と呼ばれ、それは、現在の精神医学の診断基準にある、「反社会的パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)」と、ほぼ同義であると考えられています。
反社会的パーソナリティ障害とは
反社会的パーソナリティ障害(以下、ASPDと略す)は、精神障害の診断基準である「DSM-Ⅴ」や「ICD-10」では、次のように記載されています。
【ICD-10】
- 社会的規範、規則、責務を無視する持続的な態度
- 他者の感情への無関心さ
- 人間関係を築くことはできるが、その維持ができないこと
- フラストレーションに対する耐性の低さ
- 暴力を含む攻撃性の発散に対する閾値の低さ
- 罪悪感を感じることや、経験から学ぶことができないこと
- 他者を非難したり、社会と衝突を引き起こす行動を合理化したりする傾向
【DSM-Ⅴ】
- 種々の犯罪行為を通して、他者の権利や法律を軽視する。
- 自らの欲するもの(金,権力,セックス)を手に入れるため人を欺き,利用し,言いくるめ,操作する。
- 衝動的で,前もって計画を立てることがなく,自らや他者の「行動の結果」や、その「安全」を顧みない。
- しばしばすぐに怒り,身体的攻撃性を示す。
- 自らの行動に対する後悔の念がない。その代わり、他者を責めることで、自分の行動を合理化する。彼らは人の意に従うことを嫌い,自分にとっての最善のみを考える。
- 他者に対する共感に欠け,他者の感情,権利,および苦しみを馬鹿にしたり,それらに無関心であったりする。
- 自己評価が過剰に高い傾向があり,独断的で、傲慢である。ただ、欲しいものを得るためには、感じよく、能弁に話す。
トランプ=「ソシオパス」説
ハーバート大学メディカルスクールの元准教授で、精神分析医であるランディ・ドーデスは、2019年、執筆した本の中で、ドナルド・トランプには「社会病質」の心性があると述べています。
彼は、過去の公式の記録を参照して、彼の「社会病質」的な心性について、次の点を挙げています。
1.他者に対する共感性の欠如、良心の呵責の欠如、嘘をつき、人をだますこと
2.現実認識の欠如
3.攻撃的な対応、衝動性
ドーデスは、「ドナルド・トランプの発言と行動は、彼には重篤な社会病質的特性があることを示している」と結論づけ、その特性は、「アメリカの民主主義と安全にとって深刻な危険を生み出す」と警告しました。
また、トランプの姪(長兄の娘)である心理学者のメアリー・トランプは、その著書の中で、ドナルド・トランプには、「都合が悪い状況で、嘘をつく」、「(子供時代での)人をいじめる、人を責める、責任を取らない、非を認めない、目上に敬意を払わない、他人への暴力などの、数多くの問題行動」、「自分をよく見せること、嘘をつくこと、巧妙にごまかすことといった“特技”」、「何でも知っている、なんでもできるといった大言壮語的な言動」といった性向があり、「彼は反社会性性格障害の診断基準にもあてはまっている」と述べています。
さらに、トランプの父であるフレッド・トランプは、家庭の中では「暴君」としてふるまい、「冷淡」で「人らしい感情に欠け」、家族には「無関心」である一方、「厳格で融通が利かず」「支配的」であったと述べ、彼もまた、「社会病質者」だったとしています。
トランプはASPDなのか?
トランプの心性が「ヤクザ」のそれと類似しており、「ヤクザ」には、反社会性パーソナリティ障害(ASPD)の心性があるとすれば、トランプがASPDである可能性は高いと考えられます。
ただ、「パーソナリティ障害」と診断されるような人たちの多くは、その「障害」のため、社会的に適応できない人たちです。ちなみに、ASPDの人たちの多くは、法を冒すことで、刑務所の中にいるような人たちなのです。
その点で、トランプは、有罪判決を受け、受刑者となる可能性はあったとしても、結果的に、社会的には成功しており、「パーソナリティ障害」と診断するのは適切ではないかもしれません。ただ、ASPDの心性を数多く持っている点を考慮に入れれば、「軽症」のASPDということができると考えられます。
ASPDはどのようにして生まれるのか
ASPD(反社会性パーソナリティ障害)についての最新の論文検討では、「ASPDには強い遺伝的な背景があり、その比率は51%に及ぶ」とのことです。ただ、ASPDの親による劣悪な養育環境からの影響も、そこには加味されなければならないとされています。
また、養育環境が劣悪で、思春期のみに反社会的傾向が限定されている人たちに比べ、犯罪者傾向が一生を通して続いている人たちの方が遺伝との関連性が高いとされています。(モフィット理論)
トランプの場合、父親もまたASPDである可能性があり、トランプの反社会的傾向も、子ども時代から現在にまで続いているものであり、遺伝性の可能性があると考えられます。
ASPDであるトランプが生み出す世界とは?
一次政権と異なり、トランプ二次政権内の部下たちはすべてトランプの言いなりとなる人たちであり、その点で、現政権の政策や活動は、トランプの「性格」の影響を色濃く反映したものになると考えられます。
そのトランプが、大統領就任後、すぐに始めたことは、ガザとウクライナでの戦争行為を停止させる試みです。
ただ、その考えは、そもそも彼の「個人的な満足」に基づくものであり、また、「衝動的」なもので,前もって計画を立てることがなく、理念もないものなので、彼の考えた「結果」には終わらない可能性が高いと考えられます。
また、諸外国の首脳と真の意味で「親密な関係」を築くことができず、また、他者と協力することができないトランプに取り、各国の複雑な利害関係を調整し、紛争を解決に導くような「外交」はできないと考えられます。
たぶん、独り善がりに、「踊り、歌い」、結果、すべてうまくいかなくなると、トランプはその失敗を他人のせいにして、すべてを投げ出してしまうでしょう。
失敗から学ぶことのできないトランプには、戦争を終わらせることはできないと考えます。
次に、トランプは外国からの輸入品に「高関税」を課すという経済政策を実行に移しています。
こうした、「自国の利益のみ」を追求する国内企業の保護政策も、他国の反発を招くだけでなく、世界経済がグローバル化してしまった現在において、世界経済を混乱に陥れ、世界的な「景気減速」と国内の「インフレ」をもたらすだけに終わる可能性があります。
ただ、その「結果」をトランプは受け入れようとせず、嘘で言い逃れるか、他人に責任を押し付けようとするかもしれません。
このようなトランプが率いる米国は「世界のリーダー」とはなりえず、トランプ在任中は、米国の代わりに、EUや日本などの西側社会が結束し、できれば、インドやブラジルなどのグローバルサウスの国々と連携することで、世界をまとめていかざるを得ないかもしれません。
【参考文献】
Lance Dodes : Sociopath, in 「The dangerous case of Donald Tramp」, (edited) Bandy X. Lee, New York, 2019.
メアリー・トランプ : 「世界で最も危険な男—“トランプ家の暗部”を姪が告発-」, 草野薫、菊池由美ほか訳、小学館、2020.
Black, WD : Update on antisocial personality disorder, Curr Psychiatry Rep.26,10 ; 543-549, 2024.
Andrea, L. Glenn : Antisocial personality disorder- A current review, Curr Psychiatry Rep. 15,12 ; 427, 2013.
志村宗生:「ことばのクスリ—薬に代わるこころのケア—」
志村宗生:「性格と精神疾患—性格類型によるその診立てと治療—」
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